現在、刺繍用ミシンの需要は、以前の大きな購買層であった小児を持つお母様の手を離れ、<コア>な層の興味の対象へと変化を遂げています。
其れは、正にユーザーサイドの<意識の変化>に拠るものなのです。
“作品に刺繍が必要なら、ネットのサイト等を通じて依頼すればよい、入園入学用グッズの為に、高額な<刺繍ミシン本体>を購入するほどのことは無い。”
この価値判断には、社会の経済的な影響もあったと思われますが、そうとも言えない側面がある。
何故なら、刺繍用ミシンの衰退と同時期に彼女たちの間に、「職業用ミシン」+「ロックミシン」の人気が台頭したからです。
間に合わせに購入した「小型ミシン」で作品作りに夢中なり、縫製のグレードを上げる為に<道具―機械>を模索し始めたのですね。
ミシンに<性能>を求め、本来は縫製専門家のテリトリーへもいとも簡単に手を伸ばす。
その先にあるのは、自身の作品を<製品>へと圧し上げる熱情ですから、その<向上心>たるや素晴らしい!!
これは、彼女たちの<ミシンー縫製>を通じての社会参画と考えても良いのではないでしょうか。
ひとつ上の世代(お子様のお祖母様ですね)との価値観の相違は此処ではっきり見られます。
モノの無い時代に生まれて、“今の時代、衣服は買ったほうが安くてきれいでしょ。”の認識に反して、生まれた瞬間にエルメスとユニクロを手に取ることが可能な世代に最も重要な価値は<オリジナリティ>なのです。
多少の技術の拙さは問題外、わが子には他人とは違う自分の手で作製したモノを着せたい、持たせたい。その欲求は、彼女たち自身が社会で生きる(生きてきた)主張でもある。
此処から実際の大きなビジネスに発展した例が多数!!在るのはご存知の通り。
同年齢の女性の趣味趣向を最も的確に掴むことの出来るのは<彼女たち自身>なのですから。
イヴェント・サイトショップ・店頭で<若い主婦達>の手を経た作品やテキスタイルが人気になるのは当然のことです。
子供服は特に、これから製作・販売システムが大きく変化してゆく分野でしょう。
考えてみれば、どのような著名なデザイナー、大メーカーも、スタートは素人さんなのですから。
彼女達のビジネスシーンへの参画を意識できない既存のメーカーは、将来が危ういと思いますね。大袈裟ではなく。 |